水石の名品とは
水石は、自然が生み出した芸術品で多くの素晴らしい石があります。
その中でも歴史的背景や由来・いわれなど伝承を持つ「伝承石」や「由来石」は、特に名品と呼ばれる水石で、多くの愛石家に親しまれています。
ここでは、「伝承石」や「由来石」の中から、ほんの一部ですが、名物・名品と名高い水石に関していくつか紹介させていただきます。
*画像に関しては転載などが難しく、掲載しておりません。すみません。
有名な名品水石
夢浮橋(ゆめのうきはし)
- 大きさ:横幅29.1cm×高さ4.4cm×奥行4cm
- 産地:中国江蘇省、寧山
- 所蔵: 徳川美術館
一見、細長い土坡もしくは段石のような石ですが、実は中間部は隙間があり浮いているように見える、両端だけが地に接している石だそうです。
後醍醐天皇が愛したと伝えられ、中国から伝来した名石で、『源氏物語』の最終巻「夢浮橋」にちなんで名付けられました。
写真ではその特徴がわかりにくいですが、徳川美術館に所蔵されており、館内で実物を観ることができます。徳川美術館の公式サイトでもその姿を確認できます。
末の松山(すえのまつやま)
- 大きさ:横幅16cm×高さ5.5cm×奥行5.8cm
- 産地:中国鎮江、金山寺
- 所蔵: 西本願寺
遠山系の水石で、奥から手前へと山々が連なるような景観を持ちます。写真からも石質の硬さや優れた質感が伝わり、長い年月を経た風格ある石肌の素晴らしい石です。
この石は、足利義政が愛蔵したとも伝えられ、織田信長が中国から西本願寺に贈った名石として知られています。
信長が石山本願寺との和睦の際に贈ったとされ、「石山城と交換された石」という逸話を持つことでも有名です。
なお、「末の松山」という石は2つあります。
もう一つの「末の松山」は紀州徳川家旧蔵の石で、黒く光沢があり、こちらも素晴らしい名品です。
鎌倉(かまくら)
- 大きさ:横幅40cm×高さ10cm×奥行17cm
- 産地:高田川
- 所蔵: 仙台市博物館
写真で見ると右に主峰がある石ですが、窪みを挟んで左にもひろがりがある、どっしりとした印象の石です。
重厚ですが、丸みを帯びたフォルムのせいか、どこか優し気な感じがします。
仙台伊達政宗公の遺愛石で、伊達家伝来の石の中でもっとも名高い石とのことです。
黒髪山(くろかみやま)
- 大きさ:横幅48cm×高さ14cm×奥行35cm
- 産地:日光山
- 所蔵: 寛永寺
日光・中禅寺湖のほとりで発見され、その姿が男体山(日光山)に似ていることから「黒髪山」と名付けられました。
重厚な風格を持ち、厳しい山や峰を感じさせる名品です。
石肌をよく見ると、梨地肌を思わせる繊細な質感・細かい凹凸が確認できます。
日光東照宮の修理の際、八代将軍徳川吉宗公の孫、白河音翁(松平定信)が偶然発見したそうです。
重ね山(かさねやま)
- 大きさ:横幅21cm×高さ11×奥行9.5cm
- 産地:不明
- 所蔵:永青文庫
小堀遠州という著名な茶人・作庭家の方が、「末の松山よりも良い」と評したことで有名な石です。
写真で見ると、ポッテリとした山々が前から1・2・3と重なっている、ほっこりとした感じの水石です。
持ち込みが良く、時代を感じさせる古色をおびた、素晴らしい名品です。
観世音立像(かんぜおんりつぞう・かんぜおんりゅうぞう)
- 大きさ:横幅8cm×高さ31×奥行5cm
- 産地:加茂川
- 所蔵:頼山陽旧跡保存会
菩薩様の姿石で、写真をパッと見ただけで「観音様だ!」と感じた素晴らしい名石・名品。
少し傾いた感じや、胸部当たりの紋様など、「こんな姿石があるんだ」と自然の造形の奥深さを感じずにはいられない石です。
このサイトのアイコン(ファビコン)はこの観世音立像のシルエットで作らせてもらいました。
*立像は「りゅうぞう」とも読むらしいです。どちらが正しいのかはわかりませんでした。
名品の水石には歴史あり
名品とされる水石は、形の美しさだけでなく、それぞれにまつわる物語や歴史が刻まれています。
時を超えて受け継がれてきたこれらの石は、水石の奥深い世界を伝え、今もなお多くの人々を魅了し続けています。
なお、今回紹介させていただいた名品は、すべて高橋貞助 編『伝承石』石乃美社、1988年に写真と共に解説が掲載されてます。
国立国会図書館のデジタルコレクションで、登録すればどなたでも見ることができます。
他の名品もたくさん載ってますので、よろしければ是非。