水石の育て方「養石」について

水石の育て方「養石」とは

石を育てる」「石を育て方」と聞くと、不思議に思われるかもしれません。
生物ではない石を、どのように育てるのか?と疑問に感じる方が多いと思います。(私もそうでした)

水石の世界には「養石(ようせき)」という考え方があります。
「養石」とは、石に丹念に手をかけ、その魅力を引き出し、味わいを深めることを指します。まさに「時間をかけて石を育てる」ことだといえるでしょう。

このページでは、石の育て方である「養石」について解説するとともに、水石の五大要素のひとつである「時代」についても考察していきます。

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水石を育てる「養石(ようせき)」とは

「養石(ようせき)」とは、水石に対して丹念に手をかけ、長い時間をかけてその美しさを引き出し、より味わい深いものへと育てていく過程を指します。
単なる清掃や手入れではありません。石と向き合いながら、時の流れとともに変化を楽しむ、水石の魅力の一つです。

養石の語源

「養石」は小林憲雄氏(盆栽の普及に大変尽力された方 国風盆栽展の創始者)が作られた言葉の様です。以下『水石入門マニュアル(近代出版)』からの引用になります。

「私は昔、養石という新語を考へた事がある。生き物は『養ふ』という詞が用いられても、死物の石を養ふといふのは、不条理の様に思はれるかもしれないが、石も養ふ様な心境で手当てをすると、その寂が出て来るのは、生き物の様です」(小林憲雄『盆栽』昭和18年3月号)

松浦有成『水石入門マニュアル』近代出版、2003年、53頁

「寂」は「侘び寂の寂」であり、「時間の経過と共に内側からあらわれて来る美しさ」が出て来ることを踏まえて、「生き物の様」としています。

養石により「時代」をつける

水石の世界では、この水石を育てる「養石」にて「時代」をつける(形成する)ことが重要とされています。

時代」とは、水石の五大要素の一つであり、「石が長年にわたり環境や手入れによって得た風格や古色(こしょく=古びた色合・趣のある色合・パティナ)」のことを指します。つまりは風化作用の一種です。
そして「時代」がついた水石は「持ち込みがいい」とされ、芸術性の高い水石と評価されます。

佐治川石 銘「洞庭湖」 第62回 日本水石名品展にて
佐治川石 銘「洞庭湖」 第62回 日本水石名品展にて

上下の画像は名品展に出展されていた石です。

食い入るように石を眺めてきましたが、自分が川で出会った石たち(若い石たち・新石)と全然違い、展示会の石は「古びた趣」「長い時間」を感じました。
「時代がついている、持ち込みがいいとは、こういった感じかー」と感心したものです。

古びているけれども、「汚れ」や「古臭さ」とは全然違い、「馴染んでいる」・「身にまとっている」といった印象です。

同時に、古色や趣きのある風合いは一朝一夕に作れるものではなく、長年にわたる養石の積み重ね=十分に時間をかけ大切に育まれるものだということを、深く感じました。

盆石 第62回 日本水石名品展にて
盆石 第62回 日本水石名品展にて

水石の育て方「養石」の方法

養石の方法ですが、調べた結果、大きく分けて二つありました。
文献によって細かな部分のやり方が違うように感じましたが、おおよそ共通と思われる部分をまとめてみました。

日の光にあて、潅水かんすいする(水を打つ)

天日にあてて、時折潅水する(水を打つ)」という方法です。

汚れないように木の板など清潔な場所に置き、しっかり干しながら、時折水を打ち育てていくといったやり方です。まるで植物を育てるような感覚です。
*水は2・3日、日の光に当てて塩素を抜いたものにしてください。

潅水して養石している水石

天日干しと潅水を繰り返すことで、空気中の微細な有機物・無機物(ちり・あくた)が石の表面に付着し、時間とともに馴染んでいきます。

この過程を繰り返すことで、石の表面に風化が蓄積し、色がくすんだり深みを増してきます。そして古色が生まれ、時代を感じさせる趣が加わるのです。

ここまで調べて「部屋で保管していても時代がつく」という愛石家の方の記事を思い出しました。
潅水していなくても、日本の湿度の高さが影響し、自然と時代がついてきたのかもしれません。

また、「時代がついた石の方が水を保つ(乾きにくい)」という理由も、上記のような風化の影響かと考えています。

なお、水石協会のサイトでは「養石棚」というものが紹介されていますが、個人でその環境を作るのはなかなか難しそうです。

また、文献によると、天日干しと潅水による養石が適さない石もあるようです

硬質な「油石」と呼ばれる石や、色彩や紋様が豊かな石は、黒ずむことで本来の美しさや景趣を損なう可能性があるため、注意が必要です。
こういった石には、別の養石方法が適しているでしょう。

手に取り・布で乾拭きをする

石を手に取って、柔らかい布で丹念に乾拭きをする」といった方法です。

先ほど記載した「神居古潭石」や「菊花石」などの硬質な油石や色彩・紋様が豊かな石は、この乾拭き法が適していそうです。

この方法のポイントは「手に取る・直に触る」ということです。

柔らかい布で繰り返し乾拭きすると、摩擦によって石の表面がわずかに磨かれるかもしれませんが、やすりではないので、しっかり艶が出るほどにはなりません。
しかし、手に取ることで手の油が付着し、乾拭きと相まってしっとりとした艶や輝きが生まれます。

水石はいろいろな人に触ってもらうのがいい」と聞いたことがありますが、より多くの人が触れることで、石に古色が加わっていくためだと理解しています。

「時代」を早くつける方法はあるか?

「時代」を早くつける方法はないか?と考えることは、多くの愛石家が共感する問いかけです。大先輩方も同じように様々な工夫を重ねてきたようです。

例えば、艶を出すために様々な油を試したり、水ではなく煎茶で潅水して黒ずみを出す方法を実践したり、時にはペンキを塗ったりと、価値を付けるために様々な手段が取られていたこともあったと拝見しました。

しかし、調べた限りでは、「時代を早くつける決定的な方法」は見つかりませんでした

もしかしたら、秘匿された方法が存在するかもしれませんが、あまりに過剰に手を加えると、自然石としての本来の特徴が損なわれ、水石の前提が崩れてしまうおそれがあります

自然石に関しては解釈が難しいので、また別途記載いたします。


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